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個人事業者の事業承継税制による納税猶予の活用

 最新の平成31年度税制改正では、先代事業者からその後継者へ経営権を引き継ぐ事業承継を促進させるための政策として個人事業者向けの個人版事業承継税制が創設されました。

 事業承継税制は法人の事業承継税制を含め、近年その拡充がされています。

 個人事業主は国内事業の半数以上の数を占める上、納税猶予の対象となる土地や建物、償却資産は評価額が高額になるケースもあり、非常に高い節税効果があるためとても注目されています。

 これから先、親族間で世代交代などによる経営移譲を考えられている人だけでなく、実際に相続が発生してしまったときにも活用できる制度で、制度が適用できる人は必ず活用したい制度です。

 事業承継税制による贈与税・相続税の納税猶予を受けるには様々な要件があるため、今一度確認してください。

相続税に強い税理士なら、長野県松本市の小沢税務会計事務所

 

【個人事業者の事業承継税制の概要】

・事業承継税制について

個人版事業承継税制は、青色申告(正規の簿記の原則によるものに限ります。)に係る事業(不動産貸付事業等を除きます。)を行っていた事業者の後継者として円滑化法の認定を受けた者が、個人の事業用資産を贈与又は相続等により取得した場合において、その事業用資産に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

国税庁 事業承継税制特集 個人版事業承継税制

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/kojin.htm(2019年3月15日)

事業承継税制による納税猶予は、先代経営者から後継者への事業用資産を対象に、贈与・相続によって発生する贈与税・相続税が納税猶予になります。

納税猶予と言うものの一定の要件を継続することで実質免税になります。

 これらは事業用の土地や建物、新しい機械設備など大きな償却資産を持つ事業者にとっては必ずと言っていいほど節税効果のある制度です。

個人事業主向けの事業承継税制は、最新の平成31年度税制改正で新しく創設された制度です。

 この制度は、近年改正を続けている中小法人向けの事業承継税制を踏襲された内容になっています。

 以前は中小法人のみ事業承継税制による納税猶予が適用できた理由の一つに、個人事業主は特定事業用宅地等の特例により相続税評価額を大幅に減額できることとのバランスを取ることがありましたが、土地以外の資産や生前贈与による経営移譲については個人事業主のほうが税金面で不利な部分がありますので、公平にする意味でも改正がされたと考えられます。

 経営者の高齢化等により会社数が減少傾向にあるため、個人法人共に制度はますます拡充されていくことが予想されます。

 税制改正については、 平成31年 税制改正大綱が発表されました を併せてご覧ください。

【納税猶予を受けるための要件】

・特定事業用資産の主な要件

⑴ 貸借対照表に計上されている先代事業者の事業の用に供されていた資産であること

特定事業用資産とは、納税猶予の対象となる資産で、先代事業者の事業の用に供されていた資産で、贈与(相続)発生年度の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていたものを指します。

 特定事業用資産は次の資産が該当します。

① 宅地等(400㎡まで)

 ② 建物(床面積800㎡まで)

 ③ ②以外の減価償却資産で次のもの

 ・ 固定資産税の課税対象とされているもの

 ・ 自動車税又は軽自動車税の営業用の標準税率が適用されるもの

 ・ その他一定のもの(貨物運送用など一定の自動車、乳牛・果樹等の生物、特許権等の無形固定資産)

・事業の主な要件

 ⑴  風俗営業会社又は資産管理会社ではない会社

 資産管理会社とは、有価証券、自ら使用していない不動産、現金預金等の特定の資産の保有割合が総額の70%以上の会社や、これらの特定の資産からの運用収入が総収入額の75%以上の会社のことを言います。

 主に、株や不動産などの資産を管理することを目的とするプライベートカンパニーのような会社が当てはまります。

・後継者である受贈者(相続人等)の主な要件

⑴ 申告期限までに青色申告事業者であること

贈与税・相続税の申告期限において開業している青色申告事業者である必要があります。

 ただし、贈与の場合は贈与の日まで引き続き3年以上、相続の場合は相続開始時、先代と同じ事業等に従事していたことが条件にあります。

 ⑵ 担保を提供する

納税が猶予される税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供する必要があります。

 ただし法人の事業承継税制による納税猶予の場合は、納税猶予の対象となる非上場株式をすべて担保とすることで認められることも可能ですが、個人事業者の事業承継税制による納税猶予の場合は、納税猶予の対象となるすべての特定事業用資産を担保としても認められないことに注意してください。

 これは、事業用資産がすべて差し押さえられてしまった場合、事業継続が困難になる可能性があるためです。

・先代事業者等である贈与者(被相続人等)の主な要件

 ⑴ 贈与(相続)の日の属する年、その前年及びその前々年を青色申告書により提出していること

贈与(相続)発生年度を含む過去3年間は、青色申告をしている必要があります。

 また生前に贈与する場合には、廃業届出書を提出していること又は贈与税の申告期限までに提出する見込みであることが条件にあります。

 ⑵ 先代事業者以外の場合、先代事業者から事業用資産を贈与(相続)により取得していること

 先代事業者の相続開始又は贈与の直前において、先代事業者と生計を一にする親族である必要があります。

 また、先代事業者からの最初のその適用に係る贈与(相続)の日から1年以内の贈与(相続)であることが条件にあります。

【納税猶予を受けるための手続き】

・納税猶予を受けるための主な手続き

⑴ 個人事業承継計画の提出・確認、円滑化法の認定

事業承継税制の特例は平成31年1月1日から10年間となっており、個人事業の後継者や特定事業用資産を承継した後の経営計画などを記載した個人事業承継計画を策定し、平成36年3月31日までに都道府県知事に提出し確認を受ける必要があります。

 その後、贈与時又は相続開始時に、

 ・後継者である受贈者(相続人等)の主な要件

 ・先代事業者等である贈与者(被相続人等)の主な要件

 を満たしていることについての都道府県知事の円滑化法の認定申請をして、適用を受ける必要があります。

 ⑵ 申告書及び認定書の提出

 贈与税・相続税の申告期限までに開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けるとともに、この制度の適用を受ける旨を記載した申告書と認定書の写しを税務署に提出する必要があります。

⑶ 事業用資産の継続保有及び継続届出書の提出

 申告期限後は、引き続き特例事業用資産を保有することで納税の猶予が継続されます。

また、3年ごとに継続届出書を税務署へ提出する必要があります。

【納税猶予額が免除される場合】

・納税猶予額が免除される場合

 以下の事由があった場合に、免除届出書・免除申請書を提出することにより、納税が猶予されている税額の全部または一部について納付が免除されます。

⑴ 後継者(又は先代経営者等)が死亡した場合

後継者が死亡した場合、猶予されている贈与税及び相続税は免除されます。

 また、贈与税の納税猶予を受ける目的となった贈与に係る贈与者である先代事業者が死亡した場合にも、猶予されている贈与税は免除されますが、贈与税の納税猶予の対象となっていた事業用資産は相続したとみなされるため、贈与税に代わって相続税が課されることになります。

 そのため、贈与税が免除された後は、引き続き相続税の納税猶予を受けることになるケースが多いでしょう。

 ⑵ 免除対象贈与を行った場合

免除対象贈与とは、納税猶予の対象となっている全ての事業用資産を後継者が別の後継者へ贈与し、その贈与された後継者が新たに納税猶予の特例を受ける場合の贈与を言います。

 ただし、申告期限後から5年以内に免除対象贈与を行う場合には、精神・身体障害や要介護の認定を受けるなどやむを得ない理由がある上で免除対象贈与を行うことが必要です。

⑶ 破産した場合

 破産手続開始の決定などがあった場合は、猶予されている贈与税及び相続税は免除されます。

⑷ 事業継続が困難な一定の事由が生じ、特定事業用資産の全ての譲渡・事業の廃止をしたとき

事業の継続が困難な事由による全ての特例事業用資産の譲渡や事業の廃止は、納税猶予額の全額免除ではなく一部免除の要件になります。

事業の継続が困難な一定の事由とは、一定期間の赤字や売上の減少、心身の故障等を指します

 特例事業用資産の譲渡や事業の廃止をした場合、譲渡時もしくは事業廃止時の相続税評価額又は実際の売却価格などを基に贈与税・相続税額を再計算し、当初の納税猶予額を下回る差額が免除になります。

 ただし、再計算にあたっては、当初の納税猶予額から差し引く実際の売却価格は相続税評価額の50%を限度とし、後継者親族等への過大な給与などは税額に加算されます。

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以上より、事業承継に係る納税猶予の特例は、一定の条件を満たすことで贈与税・相続税が免除される特例であることが分かります。

 この特例が使える代表的なケースとして簡潔にまとめると、以下のようになります。

・先代である個人事業主等(親などの親族)が、後継人(子供などの親族)に事業を譲り渡す場合

 ・個人事業承継計画を提出し、贈与税・相続税の申告期限までに所定の手続きを行う

 ・贈与者又は受贈者(又は相続人)が死亡するまで事業を継続し、継続届出書を提出する

 これらの条件を満たすことで贈与税・相続税が免除されるため、親から子へ事業を引き継ぐような場合などには活用できる制度となっています。

 制度上は、親から子など親族間に限らず納税猶予は受けられますが、贈与・相続は無償で譲り渡す行為であることを考慮すると、親から子への経営移譲であるケースがほとんどであるでしょう。

 次世代へ早期に経営移譲するために自社株式を贈与するケースでは、税金の中でも非常に高い税率をかけられてしまうことになります。

 一方で、自社株式は相続税評価額が高額になる場合が多いため、多額の相続税が発生するケースも少なくありません。

 それら贈与税・相続税が実質免除されることはとても節税効果のある制度であると言えます。

 親から子への経営移譲のケースで、納税猶予後は以下の流れになることが多いでしょう。

 〈贈与の場合〉

 ① 特定事業用資産に対する贈与税の納税猶予の特例を受ける

 ② 贈与者(親)の死亡により猶予されていた贈与税が免除、特定事業用資産に対する相続税が発生

 ③ 特定事業用資産に対する相続税の納税猶予の特例を受ける

 ④ 後継者(子)の死亡、又は後継者(孫など)への免税対象贈与より、猶予されていた相続税が免除

 〈相続の場合〉

① 特定事業用資産に対する相続税の納税猶予の特例を受ける

 ② 後継人(子)の死亡、又は次の後継人(孫など)への免税対象贈与より、猶予されていた相続税が免除

これら納税猶予額は、贈与や相続により譲り渡す本人が死亡するか、本人から後継人に免税対象贈与をすることによってはじめて、本人にかかっていた納税猶予額が免除されることになります。

 上記の手続きを繰り返していくことで、特定事業用資産にかかる贈与税及び相続税を永久的に免除していくこともできます。

先代から後継者、さらに先の後継者まで長い時間のかかる節税制度ですが、受けられる恩恵は非常に大きいので是非検討してください。

 

【事業承継税制による納税猶予の考察と補足】

・贈与・相続のどちらで事業承継をするべきか

 結論から言うと、親から子への特定事業用資産の譲り渡しを贈与・相続のどちらで行うべきかの判断は非常に難しいです。

 ただ、一般的な個人事業であることを前提とすると、一定のケースを除けば相続による事業承継のほうが望ましいと考えます。

 相続による事業承継を勧める理由には以下のことが挙げられます。

① 親から子への事業用資産の贈与は、使用貸借により行うことができる

使用貸借とは、契約により無償で貸し借りをすることです。

 親から子への経営移譲のケースでは、親から子へ事業用資産を贈与により「無償であげる」ことを行わなくても、使用貸借により「無償で貸してあげる」ことで経営移譲することができます。

 これらは事業用資産を契約により所有していることと変わらず、名義を変更する必要もありません。

 使用貸借を受けている子は、親に代わり事業用資産を使用することで収入を得たり減価償却費や固定資産税などの費用計上をすることができます。

 ② 贈与の場合は贈与時と相続時、手続きが2回必要になる

 贈与税の納税猶予を受ける目的となった贈与に係る贈与者である先代経営者が死亡した場合、猶予されている贈与税は免除されますが、贈与税の納税猶予の対象となっていた特定事業用資産は相続したとみなされるため、贈与税に代わって相続税が課されることになります。

 そのため、相続税の納税猶予も引き続き受けるケースになると思われます。

 つまり、それぞれ以下の手続きが必要になるということです。

贈与による事業承継 → 贈与税・相続税のいずれも申告・納税猶予の手続き

 相続による事業承継 → 相続税のみ申告・納税猶予の手続き

 ③ 贈与の場合、認定取り消しになったときの贈与税が相続税より大きい

事業承継税制による納税猶予は、特定事業用資産の譲渡・事業の廃止・手続きの不備などにより認定取り消しになった場合、猶予されていた税額に利子税を上乗せして納付しなければならないというリスクもあります。

 税率や控除などの面で、贈与税は相続税よりも非常に不利であるため、もし認定取り消しになった場合はより多くの税金を納付することになります。

・贈与による事業承継を検討するケース

 贈与による事業承継を選択することが望ましいと考えられる場合として、以下のケースが挙げられます。

 ① 相続発生時に特定事業用資産について他の相続人とのトラブルになる場合

 先代経営者である親の特定事業用資産を相続する場合、相続人はそれぞれ決められた割合の財産を相続する権利があるため、他の相続人との遺産分割協議がまとまらず、対象財産の相続権を主張されることになると、後継人であろうと全ての対象財産を相続できない可能性があります。

 遺言などにより全ての特定事業用資産を相続できたとしても、他の相続人の遺留分を侵害するだけの財産であれば、減殺請求により対象財産を手放さなければならないこともあります。

しかし、親の特定事業用資産を生前贈与した場合、贈与契約により既に対象財産の所有権が移転しているため、相続発生時に遺産分割の対象になりません。

 そのため、仮に相続人同士でトラブルになったとしても贈与された特定事業用資産を手放さなければならないことにはなりません。

 贈与をすると多額の税金が発生しますが、贈与税の納税猶予の特例を適用できる場合に初めて、この特例が活用できるでしょう。

 ただし、これらは贈与という行為のメリットであって、相続による事業承継より節税面でのメリットがあるというではないことに留意して下さい。

② 後継人が親族ではない場合

 上記①と同様に、すべての特定事業用資産を相続できない可能性があります。

 また、特定事業用資産の評価額が相続財産の大半を占めるケースなどでは、相続税率が高くなることで、他の相続人の負担が増え、トラブルになることも考えられます。

法定相続人ではないような後継人は、贈与により事業承継をすることで、いずれ発生する親族による相続手続きとは一線を画することができます。

③ 特定事業用資産の評価額が上がる場合

開発に伴う地価の上昇などにより特定事業用資産(特に土地)の価値の増加が予想される場合には、相続による事業承継と比較して節税効果が高くなることもあります。

 贈与税の納税猶予を受ける目的となった贈与に係る贈与者である先代経営者が死亡した場合、贈与税の納税猶予の対象となっていた特定事業用資産は相続したとみなされるため、贈与による経営移譲をしても最終的に相続による経営移譲と変わらなくなってしまうとも言えます。

しかし、相続による事業承継の場合は特定事業用資産を相続発生時の価値を相続税評価額とするのに対して、贈与による事業承継の場合は贈与時の価値を相続税評価額とします。

 そのため、贈与時より相続発生時に特定事業用資産の価値が増加していれば、その分だけ猶予される相続税額も減少することになります。

 納税猶予額の免除まで事業を継続するのであれば関係ありませんが、認定取り消しのリスクの軽減や、譲渡など将来的に猶予されている相続税を納付が考えられる場合であれば、贈与による事業承継は節税効果があると言えるでしょう。

・猶予されている贈与税及び相続税の納付又は免除についての考察

事業を廃止した場合や青色申告の承認が取り消された場合は、猶予されていた贈与税及び相続税に利子税を加えた金額を納付しなければなりません。

 一方で、前記した免除規定のいずれかを満たすことで猶予されていた贈与税及び相続税は免除されることになります。

 特定事業用資産について納税猶予を受けることができる個人版事業承継税制は、非上場株式(自社株式)について納税猶予を受けることができる法人版事業承継税制を踏襲した内容になっています。

法人版事業承継税制を参考にした際に、資産の性質上 新たに問題になることは、減価償却を終えた資産や陳腐化などが進んだ資産を買い替えや除却をした場合、猶予されている贈与税及び相続税についてはどうなるかということです。

 現実的に、機械設備や建物などは後継者の死亡、又は次の後継者への免税対象贈与まで保有し続けるほうが難しいでしょう。

 この問題については以下のように説明されています。

ただし、次の場合には納税猶予は継続されます。

 ① 特例受贈事業用資産を陳腐化等の事由により廃棄した場合において、税務署にその旨の書類等を提出したとき

 ② 特例受贈事業用資産を譲渡した場合において、その譲渡があった日から1年以内にその対価により新たな事業用資産を取得する見込みであることにつき税務署長の承認を受けたとき(取得に充てられた対価に相当する部分に限ります。)

 ③ 特定申告期限の翌日から5年を経過する日後の会社の設立に伴う現物出資により全ての特例受贈事業用資産を移転した場合において、その移転につき税務署長の承認を受けたとき

国税庁 個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予・免除(個人版事業承継税制)のあらまし(令和元年5月)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/pdf/0019004-009.pdf(2019年5月23日)

特定事業用資産を陳腐化などにより廃棄した場合や買い替えた場合は、納税猶予は継続されるとされています。

 納税猶予の継続ということは、猶予税額の納付又は免除となる要件には当てはまらないということです。

そのため、特定事業用資産の廃棄後に事業を廃止した場合や買い替え後に譲渡した場合は、猶予されていた贈与税及び相続税に利子税を加えた金額を納付しなければならないとも解釈できます。

ここでは「廃棄した場合」と限定されていますが、特定事業用資産を「除却した場合」も認められるかどうか確認しておきたい点です。

買い替えた場合については、新たな事業用資産の価格が売却価格(譲渡価格)以下であると買い替えによる利益が出てしまうため、その部分に対応する納税猶予は打ち切られてしまいますので注意してください。

・小規模宅地等の特例とは併用について

相続税の納税猶予を受ける特定事業用資産のうち、特定事業用宅地等に該当する宅地等については、事業承継税制による納税猶予と小規模宅地等の特例を併用することはできません。

 ただし、特定居住用宅地等などについては小規模宅地等の特例を適用を受けることができます。

 特定同族会社事業用宅地等や貸付事業用宅地等については限度面積の判定がありますので注意してください。

小規模宅地等の特例による財産評価額の減額割合は80%と非常に大きく、限度面積も同じ400㎡です。

事業承継について納税猶予を受けるか小規模宅地等の特例を受けるかの判断は、税金面だけでなくその後の事業計画によって有利判定することが望ましいでしょう。

 

【まとめ】

 事業承継税制により納税猶予を受けるためには、非常に多くの要件があります。

 要件によっては計画的に準備しなければならないものや期限があるものもあります。

 個人版事業承継税制は、法人版事業承継税制に沿った内容となっているため必要要件や実務上の手続きのほとんどは変わらない制度となっていますが、本年4月から発足された制度である上に対象財産の性質上の違いから会計事務所としてもまだまだ未知数な部分があります。

 法人版も含む事業承継税制はこれからも拡充傾向にあると思われますので、実例・実務などより理解を深め、今後の動向にも注目していきたいです。

個人事業主で仕事に使っている土地や建物、機械設備が多い人にとっては非常に有利になるであろう制度です。

 活用できれば非常に大きな節税効果がある反面、取り消しを受けてしまうと損失を被ることもありますので、将来経営移譲や引き継ぎを考えてられている方は早めに準備していくことがいいでしょう。

また、納税猶予を受けるための準備や手続きにあたっては、自社株式の贈与・相続に係る様々なシミュレーションが必要になります。

 事業承継税制による納税猶予のための株評価から税額算出、申告まで非常に専門的な知識が必要になりますので、税理士・会計事務所などの専門家に依頼することが望ましいです。


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