消費税軽減税率・改正についての解説と押さえておきたいポイント

 2019年(令和元年)10月より消費税率が現行の8%から10%に引き上げられ、それに伴う低所得者対策として、軽減税率制度が実施されます。

 軽減税率では生活必需品など対象品目を定め、標準的な税率より低い税率である8%が適用されるという従来の消費税の仕組みとは大きく変わります。

 同日より2020年(令和2年)6月までキャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度も開始され、キャッシュレス決済を利用することで消費者はキャッシュバックやポイントバックが受けられ、事業者は加盟店登録をすることで決済端末や手数料の補助などが受けられます。

 また、2023年(令和5年)10月から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されることで、事業者が消費税の仕入税額控除を受けるために必要な要件が増えます。

 今回の消費税法改正は単に消費税増税だけでなく非常に複雑な内容になっており、特に法人・個人事業主は、新制度による混乱と事務量の増加が予想されます。

 事業者・消費者が押さえておきたいポイントを軽減税率制度適格請求書等保存方式(インボイス制度)キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度に分けて解説します。

財務省 「消費税の軽減税率制度の資料」 国税庁「軽減税率制度とは(リーフレット等)」 を併せてご覧ください。

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【軽減税率制度】

・軽減税率制度の概要

・消費税及び地方消費税の税率

軽減税率:8%(国分:6.24%、地方分:1.76%)

標準税率:10%(国分:7.8%、地方分:2.2%)

・軽減税率の対象品目

・酒類及び外食を除く飲食料品

 ・定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞

令和元年(2019年)10月より、消費税率が現行の8%から10%に引き上げられます。

 これら消費増税による増収分は全て社会保障の財源に充てられるとされています。

 従来の消費税8%の内訳は、消費税6.3%+地方税1.7%であるため、地方分の割合が増えたことになっています。

軽減税率の対象品目に該当する場合は、8%の軽減税率が適用されます。

対象品目は、主に飲食料品と新聞に該当するもので、酒類や外食、医薬品などは対象外になっています。

 軽減税率の対象となる飲食料品と新聞に該当するかどうか曖昧なものもありますので今一度ご確認ください。

 対象品目に他の生活必需品が挙げられない理由としては、

 ・合理的な線引きができない

 ・低所得者の負担が重くなる「逆進性」がある

 ・日々の生活の中で、相当数で利活用されていない

 ことがあるようです。

・軽減税率制度の押さえておきたいポイント

① 一般消費者が購入する軽減税率の対象となる飲食料品について

 消費者が飲食料品を購入する際は、軽減税率の対象になるかどうか気にしたいところでしょう。

 飲食料品の税率は消費者にとっては最も身近で関心が高い項目で、特に外食等にあたるかどうかがメディア等で非常に話題になっています。

 飲食料品に係る線引きとしては、以下のようになっています。

・小売店での飲食料品の購入 → 8%(軽減税率)

 ・飲食店での飲食料品のテイクアウトや宅配 → 8%(軽減税率)

 ・飲食店店内での食事(イートイン)やケータリング → 10%

基本的に、飲食設備(テーブル、椅子、カウンター等)で飲食していく場合は外食等に該当する10%、持ち帰ることができるものであれば8%になります。

 テイクアウト用に購入したものを店内飲食するような特殊なケースなどは、どちらの税率を適用するかは販売者の自由のようです。

② 事業者・事業関係者にとっての軽減税率の注意点

飲食料品等を購入・販売する事業者等は、消費税の申告・納付のため軽減税率を考慮する必要があります。

 これらは飲食料品を販売する小売店や飲食店だけでなく、飲食料品を扱わない事業者やサラリーマンのような従業員にとっても関係があることです。

 その理由として、事業者等の納付する消費税は、原則課税の場合は受け取った消費税や支払った消費税を集計することで算出されます。

 簡易課税を選択している事業者等も仕入税額控除を受けるため軽減税率を考慮する必要があります。

 標準税率と軽減税率を誤った税区分で計上すると過大・過少申告にもなり得ますので、注意してください。

 飲食料品等を購入・販売する上で気をつけなければならない点は、主に売上・仕入・販売費及び一般管理費が挙げられます。

 <売上>

飲食料品等を販売する事業者等は、課税売上について消費税率が10%のものと8%のものと区分する必要があります。

 例として、ファミリーレストランのような料理の提供の他に店頭販売・宅配・通信販売を行う料理店を挙げると以下のように区分して売上計上すると考えられます。

 ・店内テーブルで食べることを目的とするのピザ・弁当・コーヒーの提供、マスコットキーホルダーの通信販売、店頭の新聞・おもちゃなど → 10%

・ピザのテイクアウト販売、弁当の宅配、コーヒーの通信販売、店頭のお菓子など → 8%(軽減税率) 

 誤った税区分で請求すると消費者とのトラブルにもなり得ますので、領収書やレジ打ち、メニュー表記など注意してください。

 <仕入>

飲食料品等を販売する事業者等は、課税仕入について消費税率が10%のものと8%のものと区分する必要があります。

 例として、料理・飲み物の提供をする居酒屋を挙げると以下のように区分して仕入計上すると考えられます。

 ・ビール、調理用のみりん・ワインなど → 10%

 ・食材費、調理用のみりん風調味料、料理酒など → 8%(軽減税率) 

 仕入の消費税率区分に関しては基本的にレシートなどの領収書に表記されるので、表記通りに処理することとなります。

 <販売費及び一般管理費>

 販売費及び一般管理費(販管費)とは商品や製品を販売するために直接かかる費用です。

 基本的にすべての事業者等は、販管費について消費税率が10%のものと8%のものと区分する必要があります。

 販管費のうち軽減税率の対象品目の費用計上が考えられる項目は、交際費・会議費・福利厚生費・新聞図書費でしょう。

これらは社長や個人事業主だけでなくサラリーマンなどの従業員にとっても会社の経費として計上することがあるため、経理担当だけでなく社員全員が正しく理解することが望ましいです。

 例として、個人事業主や一般的な企業の役員・従業員を挙げると以下のように区分して仕入計上すると考えられます。 

 ・接待・ミーティング・慰労としての飲食店での食事会、社食、飲食料品のカタログギフト、コンビニで購入した経済紙など → 10%

 ・会議・残業に支給する弁当、贈答品・来客用・福利厚生としてのお茶菓子、定期購読の新聞など → 8%(軽減税率) 

 販管費の消費税率区分に関しては基本的にレシートなどの領収書に表記されるので、表記通りに処理することとなります。

特に、小売店で経費計上する飲食料品や消耗品などを同時購入するケースは多くありますので必ず内訳をチェックしてください。

③ 消費税の経過措置による複数税率の混在

令和元年(2019年)10月以降においても経過措置が適用される取引(売上や仕入)は、旧税率が適用されます。

 主に、平成31年(2019年)4月以前に契約や代金の受取・支払がされたもので、令和元年(2019年)10月以降に役務の提供や譲渡・利用されるものが対象になります。

 住宅の購入やリース契約、予約による商品・サービスの先払などについては、平成31年(2019年)4月1日までに契約をせず、令和元年(2019年)10月以降に商品・サービスの提供をうけた場合には新税率が適用されます。

 詳しくは、 国税庁「消費税率等に関する経過措置について」 をご覧ください。

つまり、軽減税率制度の実施開始前後だけでなく数年にわたって旧税率8%、新税率10%、軽減税率8%が混在することになります。

旧税率は、軽減税率制度の標準税率・軽減税率と同様に、新税率等と区分して計上する必要があります。

 消費税の申告では、特に旧税率8%と軽減税率8%は税率は同じでも、国分と地方分の割合は

異なりますので、混同しないよう必ずチェックしてください。

④ レジ導入・買い替えのための補助金支援

 令和元年(2019年)9月30日までに複数税率対応レジや受発注システムの導入・改修に係る契約を締結した場合には、同年12月16日までに導入・補助金交付申請をすることで補助金が交付されます。

 補助金の金額は導入・改修の内容によって変わりますが、総額の4分の3(レジ1台あたりに対して上限20万円)の金額になります。

 対象者は、飲食料品等を継続的に販売する中小企業・小規模事業者等のみになります。

 詳しくは、 「軽減税率対策補助金とは」 をご覧ください。

 後述しますが、2019年10月より区分記載請求書等保存方式という制度がはじまります。

 飲食料品等を継続的に販売する中小企業・小規模事業者等は区分記載請求書を発行することが実務上必須になり、レジを使っている事業者等は対応できるレジを導入しなければなりません。

 手書きの領収書等を発行する事業者等は従来の領収書より記載しなければならない事項が増え、令和5年(2023年)10月からはじまる適格請求書等保存方式(インボイス方式)ではさらに増えます。

 ほとんどの事業者等が新しい請求書を発行できるレジが必要になると思いますので検討してみてください。

 また、こちらも後述しますが、キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度によるキャッシュレス決済端末の補助金支援もあります。

 対象者は全事業者で、クレジットカード・デビットカード・電子マネー・QRコードなどのキャッシュレス決済に係る決済端末等が無償で提供されます。

 この支援制度は、レジ導入等の補助金制度と併用できますが、レジ導入等の補助金制度でキャッシュレス決済端末等に対する補助金を申請した場合は、キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度によるキャッシュレス決済端末の補助金支援は申請できませんので注意してください。 

⑤ 簡易課税制度のみなし仕入率の改定

 令和元年(2019年)10月より食用の農林水産物を生産する農林水産業について、みなし仕入率が70%から80%(第二種事業)に引き上げられます。

改定後のみなし仕入税率80%については、令和元年(2019年)10月1日からの課税売上高に適用し、令和元年(2019年)9月30日までの課税売上高については従来のみなし仕入税率70%を適用することになります。

 この改定は、飲食料品を生産する農林水産業は軽減税率制度の導入により、飲食料品の売上は8%の対象となるものが多く、一方で仕入は種子・肥料・農機具など10%に引き上げられるものが多いため、消費税の負担が大きくなることが考えられるためです。

 簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5000万円以下で事前に届出をした事業について、課税売上高に一定の割合を乗じることで仕入控除税額を算出する方法です。

農業経営者は課税売上高が5000万円以上でない限り、基本的に簡易課税を選択することが多いため、対象事業者は減税になるケースが多いと考えられます。

【適格請求書等保存方式(インボイス制度)】

・区分記載請求書等保存方式と適格請求書等保存方式の概要

区分記載請求書等保存方式

 現行の請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応するための措置を講ずる(区分記載請求書等保存方式)。

<請求書等>

 ・ 売り手が発行する請求書の記載事項に、①軽減税率の対象品目である旨と、②税率ごとに合計した対価の額(税込)を加える(免税事業者も、区分記載請求書を交付可)。

なお、現行どおり、売り手には区分記載請求書の交付義務・保存義務を課さない。

 ・ 買い手は、区分記載請求書の保存を仕入税額控除の要件とする(免税事業者からの仕入れも、仕入税額控除可)。なお、上記①及び②については、買い手が事実に基づき追記できるものとする。

 ・ 偽りの請求書の交付に対する罰則は設けない。

<納付税額の計算方法>

 ・ 現行どおり、適用税率ごとの取引総額に110分の10、108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」を維持する。

適格請求書等保存方式

<請求書等>

 ・ 登録を受けた課税事業者(売り手)に対して、事業者から求められた場合の適格請求書の交付、及び交付した適格請求書の写しの保存を義務付ける(登録を受けた課税事業 者のみ適格請求書を交付できる)。

※ 適格請求書の記載事項:発行者の氏名又は名称及び登録番号、取引年月日、取引の内容(軽減税率対象品目である場合にはその旨の記載を含む)、税率ごとに合計した対 価の額(税抜又は税込)及び適用税率、税率ごとの消費税額等、交付を受ける事業者の氏名又は名称

 ※ 不特定多数の者に対して販売を行う小売業、飲食業、タクシー業等については、適格請求書の記載事項を簡易なものとすることができる(適格簡易請求書)。

 ・「適用税率」及び「適用税率ごとの消費税額等」⇒ 「適用税率」又は「適用税率ごとの消費税額等」

 ・「交付を受ける事業者の氏名又は名称」 ⇒ 省略

 ※ 売上に係る対価の返還等を行った場合、登録を受けた課税事業者(売り手)に対して、対価の返還等の内容等を記載した適格返還請求書の交付・写しの保存を義務付ける

 ・ 買い手は、帳簿及び適格請求書の保存を仕入税額控除の要件とする(免税事業者からの仕入れは、仕入税額控除不可)。

 ・ 適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書の記載事項につき、電磁的記録での提供も可能(電子インボイス)。

 ・ 偽りの記載をした適格(簡易)請求書、適格(簡易)請求書であると誤認されるおそれのある書類の交付行為に対して罰則を設ける。

<納付税額の計算方法>

 ・ 売上税額、仕入税額の計算は、

  ⑴ 「適格請求書」に記載のある消費税額の「積上げ計算」(仕入税額については、帳簿上での積上げ計算も可能)と、

  ⑵ 適用税率ごとの取引総額に110分の10、108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」 のいずれかの方法によることができる。

 ・ ただし、売上税額を「積上げ計算」する場合には、仕入税額も「積上げ計算」(端数処理による益税を防止)。

財務省 適格請求書等保存方式の導入

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/keigen_03.pdf(2019年9月1日)

令和5年(2023年)10月より、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。

 適格請求書等保存方式は、従来の請求書等保存方式と比較すると制度上大きく変わります。

 それらの軽減税率や適格請求書等保存方式の導入による社会的混乱や事務負担等を軽減するため、令和元年(2019年)10月より、区分記載請求書等保存方式が導入され、段階的に移行していくことになります。

 区分記載請求書等保存方式や適格請求書等保存方式は、従来の請求書やレシートなどの記載事項に軽減税率に関する事項や適格請求書の発行番号などを追加する必要があります。

正しい形式の請求書等を受領・交付しない場合には、消費税に係る仕入税額控除が受けられず、消費税を多く収めなければならないケースも起こり得ます。

 事業者にとっては必ず必要な知識になりますので、今一度ご確認ください。

・区分記載請求書等保存方式と適格請求書等保存方式の押さえておきたいポイント

<令和元年(2019年)10月1日 ~ 令和5年(2023年)9月30日>

① 区分記載請求書等の記載事項

 従来の請求書等は、以下の事項を記載する必要がありました。

 ⑴ 請求書発行者の氏名又は名称  〔以下、例:セブンイレブン 松本店〕

⑵ 取引年月日 〔2019年9月1日〕

 ⑶ 取引の内容  〔コシヒカリ10kg、ビール24本〕

 ⑷ 対価の額(税込) 〔3240円(税込み)、4400円(税込み) 合計7560円(税込み)〕

 ⑸ 請求書受領者の氏名又は名称 〔小沢税務会計事務所 様〕

令和元年(2019年)10月より導入される区分記載請求書等では、以下の事項を記載する必要があります。

軽減税率の対象品目である旨  〔コシヒカリ10kg ※、ビール24本 注: ※印は軽減税率(8%)適用商品〕

税率ごとに合計した対価の額(税込) 〔合計 (8%対象 3240円)、(10%対象 4400円)〕

 区分記載請求書等保存方式では従来の請求書保存方式に則り、小売店が発行する受領者の記載がないレシートのような簡略化したものも正式な請求書も認められています。

 また、自動販売機のような領収証の出ない取引や3万円以下の領収書がない取引も、帳簿に記載することで請求書等の保存が要らない特例として認められています。

② 購入者の区分記載請求書等による仕入税額控除

購入者(仕入税額控除を受ける人)は、令和元年(2019年)10月より消費税に係る仕入税額控除を受けるために区分記載請求書の保存要件があることから、販売者から区分記載請求書を受領する必要があります。

 ただし、前述のように請求書等の保存が要らない特例に当てはまる取引もありますのでご確認ください。

 また、販売者が免税事業者であったり区分記載請求書を発行できないレジを使用している事業者であるなど、購入者が区分記載請求書を受領することができないケースがあります。

 そのようなケースでは、区分記載請求書等の記載事項を追記することで区分記載請求書として認められます。

 特例として、売上や仕入を税率ごとに区分することが困難な中小事業者はみなし計算等ができる制度もあります。

 購入者の区分記載請求書等による仕入税額控除を受けるための条件をまとめると、以下のようになります。

販売者から区分記載請求書等が交付される → 請求書等の保存

 ・販売者から従来の請求書等が交付される → 必要事項の追記、請求書等の保存

 ・販売者から請求書等が交付されない → 仕入税額控除 不可(一定の取引の場合、帳簿のみの保存により可)

③ 区分記載請求書等の交付義務等

販売者は、購入者(仕入税額控除を受ける人)に対して区分記載請求書等の交付義務・写しの保存義務はありません。

ただし、購入者は一定のケースを除き、仕入税額控除を受けるための区分記載請求書等の保存要件がありますので、相手方が課税事業者の場合は基本的に交付する必要があるでしょう。

 また、区分記載請求書等は、従来の請求書等を同様に免税事業者でも交付することができます。

<令和5年(2023年)10月1日 ~ >

① 適格請求書等の記載事項

 令和5年(2023年)10月より導入される適格請求書等では、以下の事項を記載する必要があります。

登録番号  〔(適格請求書発行事業者) 登録番号 T123456789〕

 ⑼ 税率ごとの消費税額及び適用税率 〔合計 (8%対象 3000円、消費税 240円)、(10%対象 4000円、消費税 400円)〕

 適格請求書等保存方式では従来の請求書保存方式や区分記載請求書等保存方式に則り、小売店が発行する受領者の記載がないレシートのような簡略化したものも正式な請求書も認められています。

 ただし、自動販売機のような領収証の発行がないものや請求書等の交付を受けることが困難な取引については、従来と同様に帳簿に記載することで請求書等の保存が要らない特例として認められていますが、3万円以下の領収書がない取引については廃止されていますので注意してください。

 ② 購入者の適格請求書等による仕入税額控除

購入者(仕入税額控除を受ける人)は、令和5年(2023年)10月より消費税に係る仕入税額控除を受けるために適格請求書の保存要件があることから、販売者から適格請求書を受領する必要があります。

 ただし、前述のように請求書等の保存が要らない特例に当てはまる取引もありますのでご確認ください。

 また、販売者が免税事業者であったり適格請求書を発行できないレジを使用している事業者であるなど、購入者が適格請求書を受領することができないケースがあります。

 そのようなケースでは、購入者は仕入税額控除を受けることができません。

 ただし経過措置として、免税事業者からの仕入金額について令和5年(2023年)10月より3年間は80%、その後3年間は50%のみ仕入税額控除が受けられます。

つまり、消費税の課税事業者は基本的に適格請求書を受領しないと消費税計算の点で損をしてしまうことになりますので、相手方が課税事業者の場合は基本的に適格請求書に受領する必要があるでしょう。

 購入者の適格請求書等による仕入税額控除を受けるための条件をまとめると、以下のようになります。

販売者から適格請求書等が交付される → 請求書等の保存

 ・販売者から従来の請求書等が交付される → 仕入税額控除 不可(一定の取引の場合、帳簿のみの保存により可)

 ・販売者から請求書等が交付されない → 仕入税額控除 不可(一定の取引の場合、帳簿のみの保存により可)

販売者が免税事業者である → 仕入税額控除 不可(経過措置として3年間は80%、その後3年間は50%税額控除 可)

③ 適格請求書等の交付義務等

販売者が消費税の課税事業者である場合は、購入者(仕入税額控除を受ける人)に対して適格請求書等の交付義務・写しの保存義務があります。

また、適格請求書等は、従来の請求書等や区分記載請求書等と異なり免税事業者は交付することができません。

 販売先が消費税の課税事業者である場合は、適格請求書を発行できないことにより消費税計算の点で損をさせてしまうことになりますので、販売元の免税事業者は課税事業者との取引の有無など確認することが望ましいです。

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キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度

・キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度の概要

・実施期間

  令和元年(2019年)10月1日より令和2年(2020年)6月30日までの9か月間

 ・支援内容

  一般の中小・小規模事業者については、

① 消費者還元5%

② 加盟店手数料率3.25%以下への引下げを条件とし、更に国がその1/3を補助

③ 負担ゼロで端末導入(1/3を決済事業者、残り2/3を国が補助)

  フランチャイズ等の場合は消費者還元2%(端末費用及び加盟店手数料の補助はなし)

キャッシュレス・ポイント還元事業 「キャッシュレス・消費者還元事業(ポイント還元事業)の概要(PDF)」

https://cashless.go.jp/assets/doc/gaiyou_cashless_kessai.pdf(2019年9月1日)

 消費税引き上げに伴って、消費喚起とキャッシュレス決済の普及による利便性向上などを目的とした制度です。

 消費者還元の5%(一部2%)はキャッシュレス決済を利用できる人であれば誰しも受けられるものでとてもメリットがある内容です。

 当記事では、会計事務所としての視点で会計面でのメリット・デメリットなどを中心に解説します。

・キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度の押さえておきたいポイント

<事業者向け>

① キャッシュレス・消費者還元事業への登録が必要

この制度は事業者がキャッシュレス・消費者還元事業への登録を申請することで初めて支援が受けられます。

登録申請は、すでにクレジットカードなどのキャッシュレス決済を導入されている事業者は決済事業者へ、導入されていない事業者は導入したいキャッシュレス決済手段や手数料などをもとに決済事業者を決定し、手続きをしてもらう必要があります。

 手続きはご自身で決済事業者のホームページなどで簡単に行うこともできます。

 基本的に大企業でなければどの事業者も参加できる制度ですが、企業規模や事業内容などキャッシュレス・消費者還元事業に参加できる条件があるためご確認ください。

キャッシュレス・消費者還元事業の加盟店として登録されるまでには時間がかかるようです、申請の進捗状況については決済事業者に問い合わせください。

 また、レジ導入・買い替えのための補助金支援とは異なり、令和2年(2020年)4月30日まで申請ができますので、希望される事業者はご検討ください。

 ② キャッシュレス決済端末の導入費用がゼロ

キャッシュレス決済端末の導入が自己負担ゼロで行えます。

キャッシュレス決済端末は数千円~十数万ほどかかるものであり、新しく導入される事業者だけでなく旧式の端末を様々なキャッシュレス決済に対応できる新型の端末に交換することもできます。

 ただし、決済事業者との契約によりもとから無料で貸し出されているケースもありますので、全事業者が恩恵を受けているという感じでもなさそうではあります。

 ③ 決済手数料が安くなる

 制度期間中は、決済手数料が2.17%以下になります。

 2.17%の内訳としては、加盟店への手数料が3.25%以下になる上、国から1/3が補助金として交付されます。

 実際はどの決済事業者も補助金分を建て替え、差し引いた2/3の手数料を販売者から請求する方法によると思われます。

 決済手数料は、決済事業者やキャッシュレス決済手段にもよりますがクレジットカードなどは4~5%前後、スマホ決済は3.5%前後かかりますので、特に従来よりキャッシュレス決済を導入されていた事業者にとってはメリットが非常に大きいと考えます。

 ④ キャッシュレス決済利用者の獲得

キャッシュレス決済を導入するとキャッシュレス利用者を顧客として獲得することができます。

 近年、各決済事業の集客キャンペーンや大手企業とのタイアップなどにより利用者にメリットがある割引やポイント還元システムが多く、キャッシュレス決済は様々な形で普及しています。

消費税引き上げに合わせて行うキャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度は増税の緩和策の一面もあり、また政府主体ということもあるため、キャッシュレス決済を利用していない人々にもさらに普及することが予想されます。

 今回の制度では消費者がキャッシュレス決済をすることで5%(一部2%)、さらに各決済会社のポイント還元キャンペーンなどにより割引・ポイント還元されるということもあり、キャッシュレス決済の導入の有無で消費者が商品・サービスの購入先を決定することも大いに考えられます。

 現在はインターネットなどでキャッシュレス決済が利用できる事業も簡単に調べられ、キャッシュレス・消費者還元事業かどうかも公表されており店舗への掲示などでも分かります。

 事業内容や顧客層などにもよりますが、既存・新規顧客の確保のためにも小売業・飲食・生活関連などのサービス業では検討してみてください。

⑤ 売上・経費管理が煩雑になる

 キャッシュレス決済手段はクレジットカード決済、電子マネー決済、QRコード決済、スマホ決済などに大きく分類することができます。

 クレジットカード決済ではVISA・MASTARなど、電子マネーはSuicaやnanacoなど、QRコード決済はPayPayやLINE Payなど、スマホ決済はQUICPayやiDなど、非常に多くの種類があります。

 おそらく最も普及しているのはクレジットカード決済ですが、利便性・ポイント還元キャンペーン・未成年でも所有できること などから携帯・スマホを通じた決済の需要が高くなっているのが現状です。

 現金商売で売上計上などを行っていた事業者がキャッシュレス決済を導入すると、入金先が複数になり、管理や帳簿への記帳などの事務量が増える恐れがあります

 決済事業者にもよりますが、それぞれキャッシュレス決済手段ごとに入金額が決定されるためより煩雑になることが考えられます。

また、事業者は仕入などの経費になるものをキャッシュレス決済に変えることでポイント還元恩恵を受けることもできます。 

 ただし、事業者の経費になるものをキャッシュレス決済した場合、原則としてポイントなど収益や値引として計上する必要があるので注意してください。

⑥ キャッシュレス決済は手数料がかかる

 ほとんどのキャッシュレス決済は決済事業者へ売上金額の一部を手数料として支払います。

 決済手数料は、決済事業者やキャッシュレス決済手段にもよりますがクレジットカードなどは4~5%前後、スマホ決済は3.5%前後かかります。

 キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度により実質手数料は2.17%以下にはなりますが、現金売上の場合は手数料がかからないことを考慮すると、キャッシュレス決済は手数料分を損をしてしまうため事業者にとって望ましくない面もあると考えます。

 一方で、paypayやLINE Payなど一部のQRコード決済は一定期間手数料無料で設置できるものもありますので、検討されるのもいいかもしれません。

⑦ ポイント還元制度は消費増税から9ヶ月間のみ

 現在は、いずれのキャッシュレス決済手段も導入費用がかからない決済事業者がほとんどで、すでに導入された事業者も多いでしょう。

 ポイント還元制度によりキャッシュレス利用をする顧客獲得や決済手数料の負担減などを目的に新規に導入を検討される事業者も多いと思います。

 注意しなければならないポイントとしては、ポイント還元制度は令和元年(2019年)10月1日より令和2年(2020年)6月30日までの9か月間のみの時限付き制度であるということです。

 そのため、ポイント還元制度を目的とする顧客の獲得を望める期間や決済手数料の負担が減る期間は令和2年(2020年)6月30日までになります。

キャッシュレス決済は基本的に決済手数料が発生するため、ポイント還元制度終了後にコストが増加することも考慮しなければなりません。

 ポイント還元制度の期間中のみキャッシュレス決済を導入するという方法もありますが、日々継続的に取引をされる事業者などが決済手段を短期間で変更されるのはキャッシュレス決済を利用する購入者にとってあまり良い印象ではないと思いますので、その点も考慮されるといいでしょう。

<消費者向け>

 対象店舗でキャッシュレス決済により支払をするとポイントが還元されます。

 押さえておくべき点として、以下のものがあります。

⑴ キャッシュレス・消費者還元事業の加盟店である必要がある

 支払先の事業者がキャッシュレス・消費者還元事業の加盟店である場合のみポイントが還元されます。

 つまり、キャッシュレス・消費者還元事業に参加していないお店ではポイント還元はされないので注意してください。

 加盟店であるかどうかはインターネットやお店の掲示(ステッカーなど)でも調べることができます。

 どのキャッシュレス決済手段が利用できるか事業者によって異なりますので事前に確認されるのがいいでしょう。

⑵ ポイント還元率は事業者によって異なる

 一般の中小事業者でのキャッシュレス決済では、支払金額の5%がポイント還元されます。

キャッシュレス・消費者還元事業の加盟店であるほとんどの事業者から5%のポイント還元が受けられるといってもいいでしょう。

 一方でフランチャイズ等の事業者でのキャッシュレス決済では、2%になる場合があります。

 具体的には、コンビニ・ガソリンスタンド・大手外食チェーンなどが挙げられます。

 残念ながらイオンやユニクロなどの大手小売店やマクドナルドの直営店などはポイント還元の対象外になりますのでご注意ください。

⑶ ポイント還元方法は決済事業者によって異なる

 ポイント還元の方法は各決済事業者によって定められています。

 クレジットカード決済は、利用代金から随時差し引いた金額で請求する場合や、翌月・翌々月に相殺・振込をする場合が多いです。

 また、電子マネーやコード決済などは独自のポイントで還元される場合が多いです。 

 ⑷ 決済事業者のキャンペーンとポイント還元は併用できる

 決済事業者はシェア獲得のためにそれぞれ独自にキャンペーンをしていることが多く、ポイント付与やキャッシュバックなどを行っています。

キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度は経済産業所が主体となって行っている制度で、各決済事業者が独自に行っているポイント付与やキャッシュバックとは異なりますので、併用することもできます。

 クレジットカード利用によるクレジット会社独自のポイントやpaypay・d払いなどの利用額・対象店舗での支払いによるポイント還元など、利用額の何十%も還元されることもあります。

⑸ ポイント還元制度には上限がある

 ポイント還元制度によるポイント還元額は限度額が設定されているケースが多いです。

 クレジットカードは基本的に月15000円(5%対象店で30万円決済)まで還元になりますが、カードごとの上限になります。

 決済1回あたりの上限があるものや、限度額がないものもあります。

⑹ 法人・個人事業主の経費である場合はポイント還元額を考慮する

 原則として、仕入れや販管費など事業者の経費になるものを支払ったときに付与されるポイント等は事業者の収益になります。

 ポイント還元制度においては、還元されたポイントを収益もしくは値引して費用計上し、還元されたポイントを使った際は費用とします。

 消費税については、還元されたポイントは非課税収入ですが、還元されたポイントを使った場合はほとんどが課税費用になるため、消費税の面では有利になります。

ただし実務上、常識の範囲内であれば収入計上はしなくてもいい ということが通説でもあります。

経費の立替払いによるポイント付与については金額や頻度などによって給与認定や過少申告になることもありますので心に留めておくことが望ましいです。

 社内規定なので定められている会社もありますのでご確認ください。

【まとめ】

 消費税率の引き上げに合わせて実施される軽減税率やインボイス、ポイント還元制度により今後数年は非常に混乱することが予想されます。

 軽減税率については事業者の負担増加もあり、また低所得者層の負担軽減効果や財源の確保や使途に関しても不透明さや疑問点が多くあり、事業者や税務関係者としてはかなり懐疑的のようです。

 会計事務所としても事務量が非常に多くなり、顧問先の売上・経費の管理や軽減税率対象品目の設定・確認などの事務負担の増加や、レジ交換・看板やメニュー交換などによる支出増なども見られます。

 私自身、財源確保と所得再分配を目的とするのであれば消費増税と給付金で対応すればいいのでは、とも思ってしまいます。

 区分記載請求書等保存方式と適格請求書等保存方式については、すでに外国主要国では導入されており、国際的調和の観点からも納得のいく内容でしょう。

インボイスは免税事業者による益税の問題や値上がり・消費増税などによる価格転嫁の問題の面で不公平な点を是正する効果があるとされています。

 キャッシュレス・消費者還元事業によるポイント還元制度は、消費者だけでなくキャッシュレス導入に抵抗がない事業者であれば非常にメリットがある内容となっています。

 消費者にとっては時限付きの制度ではありますが、消費税の引き上げが2%に対してポイント還元率が5%(2%)以上となってますので増税前よりも安価に商品・サービスを購入することもできます。

 決済事業者によるキャッシュバックやポイント還元なども併せるとかなりの実質値引になりますので、一度ご確認いただくのがいいと思います。


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