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相続税の基本情報 ~相続方法と申告状況~

 相続税は、複雑なことが多くその判断を間違えてしまうと大きく損をしてしまうこともあります。

≪ 相続が発生前の方 ≫ ≪ 相続が発生された方 ≫ の補足情報となりますので、併せてご覧ください。

 相続税とは、どのようなものなのか、どうして税金がかかるのか、そのようなことを今一度考えることで、相続における申告や生前対策への理解に役立てていただければ幸いです。

相続税に強い税理士なら、長野県松本市の小沢税務会計事務所

 

【相続税とは】

・相続税とは、どのような税金か

相続税は、死亡した人(被相続人)の財産を相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下同じ。)により取得した配偶者や子など(相続人 等)に対して、その取得した財産の価額を基に課される租税である。

国税庁 税大講本 相続税法(平成30年度版)p.1

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/souzoku/mokuji.htm(2018年9月7日)

この財産とは、現金だけでなく、土地・建物 等の不動産や株式など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものを指します。

 相続税の計算で使われる財産の額は、「実質的に」誰の財産なのか という判断を重視します。

 そのため、特に勘違いされるものとして、被相続人が配偶者や子や孫の名義で預金していた「名義預金」が挙げられます。 

名義預金は、被相続人が別の名義で預金していただけ、とみなされてしまうため、遺産に含まれるものはどの財産なのか、生前対策及び申告の際は注意が必要です。

・なぜ、相続税が必要なのか

⑴ 所得税の補完機能

 被相続人が生前において受けた社会及び経済上の要請に基づく税制上の特典、その他による負担の軽減などにより蓄積した財産を相続開始の時点で清算する、いわば所得税を補完する機能である(注)。

(注)所得の清算としての相続税

・年々の所得 (所得税を課税) → 年々の消費(消費税を負担) → 財産の蓄積

・課税されなかった所得等〈非課税所得 免税所得 少額贈与 その他〉 → 財産の蓄積

 → 遺産(相続税を課税)

⑵ 富の集中抑制機能

 相続により相続人等が得た偶然の富の増加に対し、その一部を税として徴収することで、相続した者としなかった者との間の財産保有状況の均衡を図り、併せて富の過度の集中を抑制する。

国税庁 税大講本 相続税法(平成30年度版)p.1

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/souzoku/mokuji.htm(2018年9月7日)

 ⑴ 所得税の補完機能 というのは、私は後付けのような感じがしてしまい納得できないところもあるかな、と思ったりもします。なぜ所得の優遇措置があるのでしょう?被相続人に応じて個別に徴収すればいいのでは、とも思いますし、相続人が相続財産を消費すればまた消費税も払うことになる、とも思います。

 ⑵ 富の集中抑制機能 が一般的に認知されている相続税の存在意義だと思われます。

 相続により、特定の家系のみ財産が集中してしまい、その他の家系との格差が広がっていくのを防止する役割があるということです。

 相続人であるだけで多くの財産を得られるのは得られない人と比べて不公平であるため、というのもとてもよく分かりますが、一方で、所得の累進課税制度の中で調整されてきた財産を再度調整されてしまうというのは納得がいかないところもありますね。

【相続の方法】

・遺産は、誰が、どのように受け取るのか

 まず、誰がどの財産をどのくらい相続するかを決定する方法は、主に3つあります。

・ 遺言による相続(被相続人の意思である遺言に従って、財産を分け合う)

・ 法定相続(法律により定められている人が、定められた割合で、財産を分け合う)

・ 分割協議による相続(相続人同士が話し合って、財産を分け合う)

 遺産を相続できる人を法定相続人といい、民法により定められています。

 法定相続人以外に財産が渡る場合は、遺贈や死因贈与と言います。

 法定相続に関しては、次項をご覧ください。

 遺言がある場合、その遺言が民法のルールに従い有効である場合は、基本的に、相続人が相続するときには従わなければなりません。

 遺言がない場合には、法定相続人が財産を分け合う形になりますが、基本的に相続人は民法により定められた割合の財産を受け取る権利があります。

 しかし、現実的には、不動産など複数人で分け合うと不便なものや、配偶者のような財産を必要としている・一般的に受け取るべきとされている人が遺産を多く取得する などありますので、相続人が相談しあって遺産分割協議書を作成しての遺産分割を行うことが望ましいとされています。

・法定相続人と法定相続分

相続人の範囲  死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

第1順位  死亡した人の子供  その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位  死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)  父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。  第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位  死亡した人の兄弟姉妹  その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。  第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。

 また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

法定相続分

イ 配偶者と子供が相続人である場合  配偶者1/2 子供(2人以上のときは全員で)1/2

ロ 配偶者と直系尊属が相続人である場合  配偶者2/3 直系尊属(2人以上のときは全員で)1/3

ハ 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合  配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)1/4

なお、子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けます。  また、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。​

国税庁 相続人の範囲と法定相続分

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm(2018年9月7日)

 被相続人の財産は、基本的には法定相続人に渡ることが多いと思われますが、遺言により孫やお世話になった人など法定相続人を越えて遺贈や死因贈与もできます。

 ただし、相続時に法定相続人以外へ財産が渡る場合は、相続税が通常より2割加算され、法定相続人(親族など)の特例が適用できない など不利なことがありますので注意してください。

相続税に強い税理士なら、長野県松本市の【小沢税務会計事務所】
 

【相続税の申告状況】

・平成28年の相続税の申告状況

 ⑴ 被相続人数 1,307,748人

 ⑵ 申告があった被相続人数 105,880人

   課税割合( ⑴ / ⑵ ) 8.1%

 ⑶ 課税価格 147,813億円

 ⑷ 税額 18,681億円

   一人当たりの課税価格( ⑶ / ⑵ ) 13,960万円

   税額( ⑷ / ⑵ ) 1,764万円

 相続財産の内訳

・土地 60,359億円(38.0%)

・家屋 8,716億円(5.5%)

・有価証券 22,817億円(14.4%)

・現金・預貯金等 49,426億円(31.2%)

・その他 17,345億円(10.9%)

  合計 158,663億円

国税庁 平成28年分の相続税の申告状況について

https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2017/sozoku_shinkoku/index.htm(2018年9月7日)

 改正により平成27年1月1日より、相続税計算上で全員が相続財産から一律差し引くことのできる基礎控除が

 5000万円 + (1000万円 × 法定相続人の数)

から現行の

3000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

に変更されました。

 過去10年、相続財産に相続税がかかってくる被相続人数は、約4%を推移していましたが、改正年以降の申告では、およそ倍の8%の人が課税対象者になっています。

 それでも亡くなった方の8%ほどしか申告していないと考えると、対象者は少ないような気もします。

 また、相続税がかかる被相続人が増加したため、課税対象となった財産総額が平成26年の11.4兆円から改正年以降は14.5兆円となっています。

 税収も平成26年の1.3兆円から1.8兆円と約1.5倍もの増税効果が出ていますが、その伸び率は課税価格の伸び率よりも大きくなっています。

 これは、最高税率が55%に引き上げられたことや従来の基礎控除 5000万円+(1000万円 × 法定相続人の数) より遺産が少なかった被相続人を申告対象者としたことが、税収を増加させた要因だと考えられます。

 申告される相続財産の構成としては、最も多いのが土地であり約4割あります。

 次いで、現金・預貯金等が約3割ありますが、近年の推移として、土地は減少傾向にあり、その分は現金・預貯金等が増加傾向にあります。

 やはり、土地などの不動産を相続するというのは特例や評価により評価額は下げられるものの現実的に相続するには現金等で相続するより不便なケースも多いでしょう。

 一方で、現金等は利便性と引き換えに額面通りに申告するしかないので、税法上では不利になります。

 ネットやテレビなどの情報源の発達により、今後さらに被相続人や相続人の相続に対する意識が高まってくると予想されます。

 相続課税制度の更なる改正があったとしても、課税対象者が増える方向になるでしょうし、税理士に生前対策や申告を依頼するケースも今後増えていくでしょう。

 その際に、現金等のままで相続されるのか、不動産など形を変えて相続されるのか、申告人数や対象財産の推移がどのようになっていくか、注目されます。

・申告件数と税理士の関係

 相続税がかかるだけの財産があった被相続人数(申告があった件数)の推移は、以下の通りです。

 平成22年  49,891人

 平成23年  51,559人

 平成24年  52,572人

 平成25年  54,421人

 平成26年  56,239人

 平成27年  103,043人

国税庁 統計情報 相続税 課税情報

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/souzoku/mokuji.htm(2018年9月7日)

 一方で、税理士の人数は、平成29年12月末日現在で77,116人となっています。

日本税理士連合会 税理士登録者数

http://www.nichizeiren.or.jp/cpta/about/enrollment/(2018年9月7日)

 平成27年の改正により、申告件数は税理士の人数を逆転していることが分かります。

 つまり、税理士1人に対して相続税が発生するような案件が0.7件だったものが、改正後は、1人に対して1.3件となっています。

 ただし、税金がかからない場合でも申告することは多いため、申告件数はもっと多いと思われます。

 実務上よくある事例としては、評価後の相続財産金額が基礎控除以下であってもギリギリである場合や、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを適用して相続税をゼロにする場合があります。

 しかし、相続税や贈与税などの申告は、所得税などの知識とは全く異なる専門知識が必要となるため、得意な会計事務所は年間何十件もの申告を行い、あまり得意でない会計事務所は案件自体取り扱わないということもあります。

 また、会計事務所・税理士の損害賠償をめぐる裁判も、相続・相続対策の判例が圧倒的に多くなっています。

特に資産税は、その財産の金額が大きく、資産評価など税理士の腕次第で納税額が大きく変わりますので、できる限り実務経験と実力がある会計事務所に依頼されるのが望ましいと考えます。

 

【まとめ】

 相続とは、被相続人ひとりの力だけでは、なかなか上手くいかないものだと考えます。

適切で円満な相続を目指すためには、被相続人になるであろう方は

・相続人である親族とよく話し合うこと

・できるだけ多くの財産を残せるよう生前対策をすること

この2つのことをするだけで、相続発生後の手続きが大きく変わります。

 また、相続人においても、相続が発生する前に、共に協力し合うことが望ましいです。

ご親族みなさんで、これから先に直面するであろう相続を考えていただけると、突然のことに慌てることなく対処できるはずです。

 そして、相続税の申告・相続対策については、できる限り税理士にご相談いただくことがよろしいと考えます。

 その理由としては、申告が必要な限り、必ず税理士が関与するためです。

 また、国税局のホームページでも当ホームページでも説明されてはいますが、基礎的な知識・手続きだけでも、とても複雑です。

 会計事務所・税理士の損害賠償をめぐる裁判も、相続・相続対策の判例が圧倒的に多くなっています。

 税の専門家でも誤りが起きてしまう手続きを、予定被相続人・相続人の方々がご自身で行うというのは、リスクを覚悟しなければならないと考えます。

特に、相続税の申告・相続対策は、案件の少なさから税理士・会計事務所にも得意不得意が一番分かれる主要項目だと思われます。

 法人税や所得税などの申告とは、全く異なる業務ですので、相続に関しては税理士・会計事務所によって申告の内容が変わる、ということを理解して、より相続税を得意としているところへ相談・依頼するのが良いでしょう。

 余談となりますが、「税理士実態調査報告書」で税理士の年齢層は、以下の通りになっています。

平成26年1月1日  20歳代:0.6%

 30歳代:10.3%

 40歳代:17.1%

 50歳代:17.8%

 60歳代:30.1%

 70歳代:13.3%

 80歳代:10.4%

 事務員のわたしは、今年度の税理士試験に合格すれば20歳代に分類されます。

 税理士となった方法は、試験合格者が46%ほどで、半分の方々は試験免除されています。

 平成16年の調査では20歳代は 1.1%ですので、中年層で試験合格・免除により税理士登録をされている方が増えているのかなぁという印象です。

 20代税理士は、全国で450人程しかいないことになりますので、狭き門ですが頑張りたいですね。

 ちなみに、所長は50歳代に分類されますので、税理士業界ではまだ若手側なのですね・・・。


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