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相続財産に含まれるものと含まれないもの

相続税の申告と納付は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に被相続人の住所地を所轄する税務署へ申告書の提出と納付をする必要があります。

 しかしその前に、相続の放棄又は限定承認を行うかどうかを決定しなければならず、どちらかを行うためには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に陳述書 等を家庭裁判所へ提出する必要があります。

 相続の放棄又は限定承認を行うべきかどうかは、財産と借金がどの程度あるのか、自分がどの財産をどの程度相続できる権利があるのか 等を把握しておく必要があります。

 相続の放棄又は限定承認は3ヶ月以内、遺産分割を含む申告は10ヶ月以内、と短期間の中で相続財産がどの程度あるかの判断を誤ってしまうと取り返しのつかないことになる場合もありますので、参考にしてください。

相続税に強い税理士なら、小沢税務会計事務所

 

【相続財産に含まれるもの】

・相続税がかかる財産

相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。

 なお、次に掲げる財産も相続税の課税対象となります。

 (1) 相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産

 死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金などが、これに相当します。

 (2) 被相続人から死亡前3年以内に贈与により取得した財産

 相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合には、原則としてその財産の贈与された時の価額を相続財産の価額に加算します。

 (3) 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産

 被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受ける財産を贈与により取得した場合には、その贈与財産の価額(贈与時の価額)を相続財産の価額に加算します。

 次のものについても、相続や遺贈によって取得したものとして課税されます。

 (1) 被相続人から生前に贈与を受けて、贈与税の納税猶予の特例を受けていた農地や非上場会社の株式など

 (2) 相続人がいなかった場合に、民法の定めによって相続財産法人から与えられた財産

国税庁 相続税がかかる財産

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm(2018年9月10日)

 まず、被相続人の金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものは相続財産になりますが、

 言い換えると、被相続人の所有している換金価値のあるものは、基本的にすべて相続財産となり、申告が必要な際には相続財産の明細書に載せる必要があるということです。

 土地や建物のような資産が共有財産である場合、被相続人の所有分も相続財産となります。

 動産といわれる一般的に自宅で使われるような家具家電なども相続財産となりますが、それらを一つ一つ相続財産の明細書等に載せるのは、とても煩わくなってしまうため、財産の価値が5万円以下ならば「家財一式 〇〇万円」のようにまとめてもよいとされています。

 家財等も一つ一つ換金価値があるのかどうか評価しなければなりませんが、中古市場価格や小売価格から償却額を引いた残額などで評価するしかありません。

 余程高価な美術品や貴金属などがあれば鑑定による価格で評価しますが、一般的な家財一式として10~30万円程度でまとめてしまうことが多いようです。

 もし、「テレビは私、冷蔵庫はあなた。」みたいに少額な財産を分け合いたい場合でも、一旦誰かが一式すべて相続した後、譲り受けることができれば、それは常識的な範囲の金額のものでしたら生活用動産の譲渡として課税はされないと思われます。

 注意しなければならないことは、被相続人が相続人名義で貯金していた名義預金は、相続財産に含まれるということです。

 名義預金は、あくまで被相続人がたまたま自分名義以外の口座に預金していたという扱いになってしまいます。

 その口座が名義預金にあたるかどうかの判断として、

・口座・預金自体が自らのものであることを認知していたか

・自らが管理していたか、自由に使えるお金だったか

・贈与の要件を満たしているか

 などが挙げられます。

 客観的に見て名義預金だと思われる場合は、現金・預金として課税対象になってしまいますので、相続発生前の方は、今一度ご確認ください。

 以上は、被相続人が死亡した時点に保有していた財産について相続した場合は課税されるという規定になりますが、被相続人が死亡した時点で保有していない財産についても課税対象になるものがあります。

(1) 相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産

 いわゆる、みなし相続財産と言われるものであり、被相続人が亡くなったことによって相続人が財産をもらったという理由で課税対象になります。

 ただし死亡保険金の場合、保険料の負担者や死亡保険金の受取人によっては、相続税ではなく所得税や贈与税の課税対象になりますので注意してください。

 (2) 被相続人から死亡前3年以内に贈与により取得した財産

 相続税が発生することを回避するために被相続人が亡くなる直前に贈与してしまうことを未然に防ぐため、相続人に対して贈与した財産の近3年分は被相続人の財産に含めます、ということです。

 「相続人」が贈与により取得した財産ということは、孫などの相続人以外の方へ贈与した場合は、相続財産に含まれません。

 しかし、遺言書で通常の法定相続人以外の方に財産を相続させる旨がありますと、その対象者も相続人となり、3年以内の贈与分は課税対象になりますので注意が必要です。

また、以下の贈与した財産も相続財産に含まれないと規定されています。

加算しない贈与財産の範囲

 被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

 (1) 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額

 (2) 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額

 (3) 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額

 (4) 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

国税庁 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm(2018年9月10日)

 (3) 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産

 相続時精算課税は、相続発生前にご生前の(予定)被相続人の財産を相続したとみなして事前に財産を贈与する手続きなので、相続発生時には、相続財産に含めることになります。

 これらは、あくまで被相続人から相続により受け取る財産として課税対象になるという話であり、遺産分割の対象にはなりません。

 相続税については税法上、遺産分割については民法上の話です。

 詳しくは、 相続における民法と税法の違い で説明させていただきます。​

相続税に強い税理士なら、小沢税務会計事務所

 

【相続財産に含まれないもの】

・相続税がかからない財産

 1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物

ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。

 2 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

 3 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人又はその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利

 4 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

 5 相続や遺贈によってもらったとみなされる退職手当金等のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

 6 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの

なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。

 7 相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

国税庁 相続税がかからない財産

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm(2018年9月10日)

 おそらく、実務上当てはまることが多いものは、

1.墓地・仏壇などの財産

 4.死亡保険金の非課税分

 5.死亡退職金の非課税分

 になると思われます。

4.死亡保険金の非課税分(500万円 ×法定相続人の数) については、相続対策として活用されることも多い項目であるため、

の記事も併せてご覧ください。

 

【相続開始後の収益と費用】

 被相続人が死亡した時点に保有していた財産について相続した場合は課税されるという規定になりますが、どこまでが被相続人の財産として課税対象になるか、また、どこまでが被相続人の費用として相続財産から控除できるのか、実務上よくあるケースを紹介します。

・被相続人の収益

被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。

国税庁 相続財産から控除できる債務

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm(2018年9月10日)

 被相続人が事業を営んでいたり、土地・建物を賃貸して発生する不動産収入などがある場合、まず相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に被相続人の所在地の所轄税務署へ申告書の提出と納税をする必要があります。これを準確定申告といいます。

 当然、生前発生した収入は、被相続人固有の財産であるため、プラスの相続財産に含まれます。

 また、売掛金や貸付金、未収家賃などの未実現利益と言われるすでに実現した収益でも今現在手元になく将来的に手元に来るような収入も相続財産に含まれますので、過少申告にならないように注意してください。

 ただし、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引くことはできません。

 被相続人が亡くなった後に発生するような家賃収入や時価の変動による利益などは、その収入が発生する起因となった財産を相続した人の収入・財産となりますので相続財産に含める必要はありません。

 まとめると、以下のようになります。

生前の収入 → 相続財産

 生前発生していて将来回収できる収入 → 相続財産

 死亡後に発生する収入 → 相続人の財産

・被相続人の費用

(1) 債務

 差し引くことができる債務は、被相続人が死亡したときにあった債務で確実と認められるものです。  なお、被相続人に課される税金で被相続人の死亡後相続人などが納付又は徴収されることになった所得税などの税金については被相続人が死亡したときに確定していないもの(相続時精算課税適用者の死亡によりその相続人が承継した相続税の納税に係る義務を除きます。)であっても、債務として遺産総額から差し引くことができます。  ただし、相続人などの責任に基づいて納付したり、徴収されることになった延滞税や加算税などは遺産総額から差し引くことはできません。

 (2) 葬式費用

 葬式費用は債務ではありませんが、相続税を計算するときは遺産総額から差し引くことができます。

国税庁 相続財産から控除できる債務

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4126.htm(2018年9月10日)

 被相続人の収益と同じよう、生前発生した費用は、被相続人固有の財産であるため、マイナスの相続財産(相続財産から差し引くこと)に含まれます。

 また、借入金や住宅ローンなどの借金、未払いの税金や医療費、準確定申告の所得税・消費税の納付額などの未実現損失と言われるすでに発生した費用でも将来的に支払わなければならない債務は、相続財産から差し引くことができます。

 特に重要なのは、被相続人の財産から支払った葬儀費用は、相続財産から差し引くことができる費用なので忘れずに行ってください。

 ただし、以下のように葬儀費用に該当しないものもありますので注意してください。

1.葬式費用となるもの

 遺産総額から差し引く葬式費用は、通常次のようなものです。

 ⑴ 葬式や葬送に際し、又はこれらの前において、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(仮葬式と本葬式を行ったときにはその両方にかかった費用が認められます。)

 ⑵ 遺体や遺骨の回送にかかった費用

 ⑶ 葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えば、お通夜などにかかった費用がこれにあたります。)

 ⑷ 葬式に当たりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用

 ⑸ 死体の捜索又は死体や遺骨の運搬にかかった費用

 2.葬式費用に含まれないもの

 次のような費用は、遺産総額から差し引く葬式費用には該当しません。

 ⑴ 香典返しのためにかかった費用

 ⑵ 墓石や墓地の買入れのためにかかった費用や墓地を借りるためにかかった費用

 ⑶ 初七日や法事などのためにかかった費用

国税庁 相続財産から控除できる葬式費用

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm(2018年9月10日)

 被相続人が亡くなった後に発生した諸費用や損害、時価の変動による損失などは、基本的にその発生する起因となった財産を相続した人の費用・損失・債務となり、相続財産から差し引くことができないので、遺産分割の際は、その点も考慮する必要があります。

 まとめると、以下のようになります。

生前の費用 → 差し引くことのできる債務

 生前発生していて将来支払わなければならない費用 → 差し引くことのできる債務

 葬儀費用 → 差し引くことのできる費用

 死亡後に発生する費用 → 相続人の費用

 

【まとめ】

 第一に、単純承認のままで相続してよいか、の判断がありますが、通常、相続財産でマイナスの財産である負債がプラスの財産である資産を上回っている場合もしくは上回る可能性がある場合は、限定承認又は相続放棄をするケースが多いです。

 そのためには、被相続人の資産・負債状況について確実に把握するしかありません。

 借金等の負債が相続後に出てくると取り返しのつかない大変な思いをすることになりかねませんので、相続が予定されるご親族同士で生前のうちによく話し合っておくことが大切でしょう。

 第二に、相続税の申告が必要になった場合、課税対象になってしまう財産と差し引くことができる財産・費用があるということです。

 当然、過少申告は加算税などの対象になり、悪意があるものは重加算税が課せられます。

 過大申告であれば、税金の納めすぎとなりますので税務署から指摘されるというような問題はないですが、何より余計な税金を納めるという損をしてしまいますし、過大に評価してしまった財産などが二次相続や資産譲渡のときの参考になってしまうことも考えられますので、正確かつ適切な申告が望まれます。

 どのような財産が課税対象になって、差し引くことができるものがあるのか理解することで、生前対策としてできることは多いと考えます。

 相続の発生が考えられる方も、ご親族とよく話し合い、ご活用ください。


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