相続・贈与における土地の評価について ~ 地目区分 ~
土地や建物などの不動産を売り渡す・譲渡する際には、実際の取引価格や時価を基準に利益が出れば税金が発生することになります。
一方で、不動産を相続・無償で贈与する際には、財産評価における基本通達により引き渡し時点の価値を自力算出することとなります。
不動産の中でも、土地については、路線価方式又は倍率方式により 価値を算出する = 評価する ことが定められています。
評価にあたって、対象地の用途・地目により評価額や特例の対象になるかどうかがありますので、それぞれどのような特徴があり、どの課税単位に当てはまるのか確認してください。
相続・贈与における土地の評価について ~路線価と倍率~ も併せてご覧ください。
【土地の区分】
・地目区分と判断基準
(土地の評価上の区分)
土地の価額は、次に掲げる地目の別に評価する。ただし、一体として利用されている一団の土地が2以上の地目からなる場合には、その一団の土地は、そのうちの主たる地目からなるものとして、その一団の土地ごとに評価するものとする。
なお、市街化調整区域(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条((区域区分))第3項に規定する「市街化調整区域」をいう。以下同じ。)以外の都市計画区域(同法第4条((定義))第2項に規定する「都市計画区域」をいう。以下同じ。)で市街地的形態を形成する地域において、40((市街地農地の評価))の本文の定めにより評価する市街地農地(40-3((生産緑地の評価))に定める生産緑地を除く。)、49((市街地山林の評価))の本文の定めにより評価する市街地山林、58-3((市街地原野の評価))の本文の定めにより評価する市街地原野又は82((雑種地の評価))の本文の定めにより評価する宅地と状況が類似する雑種地のいずれか2以上の地目の土地が隣接しており、その形状、地積の大小、位置等からみてこれらを一団として評価することが合理的と認められる場合には、その一団の土地ごとに評価するものとする。 地目は、課税時期の現況によって判定する。(昭47 直資3-16・平3課評2-4外・平11課評2-12外・平16課評2-7外・平18課評2-27外・平29課評2-46外改正)
(1) 宅地
(2) 田
(3) 畑
(4) 山林
(5) 原野
(6) 牧場
(7) 池沼
(8) 削除
(9) 鉱泉地
(10) 雑種地
(注) 地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則(平成17年2月25日付民二第456号法務省民事局長通達)第68条及び第69条に準じて行う。ただし、「(4)山林」には、同準則第68条の「(20)保安林」を含み、また「(10)雑種地」には、同準則第68条の「(12)墓地」から「(23)雑種地」まで(「(20)保安林」を除く。)に掲げるものを含む。
国税庁 財産評価 基本通達 第2章 土地及び土地の上に存する権利
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/02/01.htm#a-9(2018年9月11日)
相続・贈与時に行う土地の評価は、その地目により、路線価方式や倍率方式いずれによっても価額が大きく変わるため、対象地がどの地目区分に当てはまるのか正しく判断することが必要です。
地目は、用途・利用目的などにより決定されます。
判定基準は、以下の通りに定められています。
不動産登記事務取扱手続準則 第68条
次の各号に掲げる地目は,当該各号に定める土地について定めるものとする。この場合には,土地の現況及び利用目的に重点を置き,部分的にわずかな差異の存するときでも,土地全体としての状況を観察して定めるものとする。
一 田 農耕地で用水を利用して耕作する土地
二 畑 農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
三 宅地 建物の敷地及びその維持若しくは効用を果すために必要な土地
四 学校用地 校舎,附属施設の敷地及び運動場
五 鉄道用地 鉄道の駅舎,附属施設及び路線の敷地
六 塩田 海水を引き入れて塩を採取する土地
七 鉱泉地 鉱泉(温泉を含む。)の湧出口及びその維持に必要な土地
八 池沼 かんがい用水でない水の貯留池
九 山林 耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
十 牧場 家畜を放牧する土地
十一 原野 耕作の方法によらないで雑草,かん木類の生育する土地
十二 墓 地人の遺体又は遺骨を埋葬する土地
十三 境内地 境内に属する土地であって,宗教法人法(昭和26年法律第126号)第3条第2号及び第3号に掲げる土地(宗教法人の所有に属しないものを含む。)
十四 運河用地 運河法(大正2年法律第16号)第12条第1項第1号又は第2号に掲げる土地
十五 水道用地 専ら給水の目的で敷設する水道の水源地,貯水池,ろ水場又は水道線路に要する土地
十六 用悪水路 かんがい用又は悪水はいせつ用の水路
十七 ため池 耕地かんがい用の用水貯留池
十八 堤 防水のために築造した堤防
十九 井溝 田畝又は村落の間にある通水路
二十 保安林 森林法(昭和26年法律第249号)に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
二十一 公衆用道路 一般交通の用に供する道路(道路法(昭和27年法律第180号)による道路であるかどうかを問わない。)
二十二 公園 公衆の遊楽のために供する土地
二十三 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地
wikibooks コンメンタール不動産登記法 不動産登記事務取扱手続準則第68条
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E7%99%BB%E8%A8%98%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%8F%96%E6%89%B1%E6%89%8B%E7%B6%9A%E6%BA%96%E5%89%87%E7%AC%AC68%E6%9D%A1(2018年4月27日)
不動産登記事務取扱手続準則 第69条
土地の地目は,次に掲げるところによって定めるものとする。
一 牧草栽培地は,畑とする。
二 海産物を乾燥する場所の区域内に永久的設備と認められる建物がある場合には,その敷地の区域に属する部分だけを宅地とする。
三 耕作地の区域内にある農具小屋等の敷地は,その建物が永久的設備と認められるものに限り,宅地とする。
四 牧畜のために使用する建物の敷地,牧草栽培地及び林地等で牧場地域内にあるものは,すべて牧場とする。
五 水力発電のための水路又は排水路は,雑種地とする。
六 遊園地,運動場,ゴルフ場又は飛行場において,建物の利用を主とする建物敷地以外の部分が建物に附随する庭園に過ぎないと認められる場合には,その全部を一団として宅地とする。
七 遊園地,運動場,ゴルフ場又は飛行場において,一部に建物がある場合でも,建物敷地以外の土地の利用を主とし,建物はその附随的なものに過ぎないと認められるときは,その全部を一団として雑種地とする。ただし,道路,溝,堀その他により建物敷地として判然区分することができる状況にあるものは,これを区分して宅地としても差し支えない。
八 競馬場内の土地については,事務所,観覧席及びきゅう舎等永久的設備と認められる建物の敷地及びその附属する土地は宅地とし,馬場は雑種地とし,その他の土地は現況に応じてその地目を定める。
九 テニスコート又はプールについては,宅地に接続するものは宅地とし,その他は雑種地とする。
十 ガスタンク敷地又は石油タンク敷地は,宅地とする。
十一 工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場は,宅地とする。
十二 火葬場については,その構内に建物の設備があるときは構内全部を宅地とし,建物の設備のないときは雑種地とする。
十三 高圧線の下の土地で他の目的に使用することができない区域は,雑種地とする。
十四 鉄塔敷地又は変電所敷地は,雑種地とする。
十五 坑口又はやぐら敷地は,雑種地とする。
十六 製錬所の煙道敷地は,雑種地とする。
十七 陶器かまどの設けられた土地については,永久的設備と認められる雨覆いがあるときは宅地とし,その設備がないときは雑種地とする。
十八 木場(木ぼり)の区域内の土地は,建物がない限り,雑種地とする。
wikibooks コンメンタール不動産登記法 不動産登記事務取扱手続準則第69条
https://ja.wikibooks.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E7%99%BB%E8%A8%98%E4%BA%8B%E5%8B%99%E5%8F%96%E6%89%B1%E6%89%8B%E7%B6%9A%E6%BA%96%E5%89%87%E7%AC%AC69%E6%9D%A1(2018年4月27日)
複雑な基準となっておりますが、実務上では、登記簿や固定資産税納税通知書に地目が記載されています。
ただし、登記簿の地目は、変更されていない場合もあるので基本的には、固定資産税納税通知書を基に地目を判定します。
固定資産税納税通知書は、自治体が現況を見て地目を決定しているため正確であることが多いですが、稀に異なる場合もありますので注意してください。
税法上よく使われる、主な地目としては、宅地・田・畑・山林・原野・雑種地です。
次項で、もう少し掘り下げて記述します。
【税法上の土地の特徴】
・地目の特徴
宅地
市街地にある土地は、ほとんどが宅地になります。
今現在 住宅だけが建っている土地だけでなく、家やマンションやビルなどを建てられる土地も含まれています。
宅地の判断基準として、自由に建物を建てられる土地と考えてよいでしょう。
田 および 畑
田・畑の違いは、用水を引いてい耕作しているかどうかです。
固定資産税評価額は、畑のほうが田より高くなることが多いですが、これは畑のほうが整地されているため土地としての価値が高いとされるためだと考えられます。
田・畑は、農地または農業を行うことができる土地です。
農地は、最初から決められているため、作物をつくっていてもつくっていなくても農地転用しない限り農地となります。
山林 および 原野
山林・原野の違いは、手を加えることなく木が生えているか草が生えているかです。
いずれも市街地区域には無く、大きく手を加えていない土地ですが、山林は、地目が山林とされる地区があらかじめ定められていることが多いようです。
原野については、宅地でも農地でもなく土地に手を加えられてない荒地を指すことが多いです。
固定資産税評価額は、原野のほうが山林より高くなることが多いですが、これは原野のほうが宅地に転用しやすいことや土地整備が山林より容易であることが考えられます。
雑種地
雑種地は、宅地・田・畑・山林・原野・牧場・池沼・鉱泉地いずれにも該当しない土地になります。
建物が建っておらず、農地・山林等でもなく、整備されていない原野のような土地でもない場合は雑種地になる可能性が高いです。
代表的なものとしては、駐車場、墓地、ゴルフ場・遊園地などの施設 などがあります。
砂利を引いたり土を入れたりされた土地の場合は、雑種地になることが多いです。
倍率地区においては、固定資産評価額に乗じる倍率がないため、原則として各自治体の路線価を用いて評価します。
これは、雑種地の実態が多様であるため画一的な評価基準を設けられないためだと考えられます。
路線価地区では、路線価を用いてそれぞれ評価します。
田・畑・原野・雑種地などでも宅地に比準して評価する宅地並み課税というケースが多いため、評価額は高くなる場合が多いです。
一方で、倍率地区では、雑種地以外は固定資産税評価額に倍率を乗じて評価します。
固定資産税評価額は、評価額が高い順に
宅地 > 雑種地 > 畑 > 田 > 原野 > 山林 となる場合が多いです。
固定資産税は、所得・法人税などの自主的に納税額を申告する申告納税方式と異なり、各自治体が納税額を決定する賦課課税方式であるため、適当な地目により評価されているか確認してください。
なお、一つの土地に登記上などで複数の地目が存在する場合があります。
そのようなケースでは、その土地の主に目的とする用途で評価するとされています。
例えば、雑種地とされる大きな月極駐車場の横に宅地とされる小屋がある土地では、宅地も含めて雑種地と評価することが適当とされるしょう。
【まとめ】
相続・贈与において、土地は総財産の中でも多くを占めるケースが多いです。
その理由として、財産としての価値が高いこと、建物と違い価値が下がらないことがあります。
相続・贈与時における土地に関する特例なども多いため、特に相続対策としてはどれくらいの財産があるのか把握しておくことが大切でしょう。
土地の評価について、土地などの不動産はその金額の大きさにより、応用力を求められ、柔軟豊富な知識と実務経験を必要とします。
土地の評価を含む財産評価は、相続・贈与時において最も税理士の腕による差が大きいといっても過言ではない部分だと思われます。
金額が大きい分、節税効果やリスクも大きくなるため、適切な申告ができるよう、相続税・贈与税に強い会計事務所に依頼されることが良いと考えます。
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